機材を貸してくれた先輩の話

3週間くらいビートを作っていなかった。

特に忙しいわけでも時間がないわけでもなく、何かほかに夢中になっていることがあったわけでもなかった。

何となく日々を過ごしていたら3週間が経っていた。


音楽を作り出してから、何も触らなかった時間がこんなに長いのは初めてな気がする。

家で仕事をしながら人のミックスを聞いてすげーなーと思いつつ、イベントが延期や中止になることにも慣れ、普段遊んでいた場所のために何も出来ていないことに気づく。


もしかしたら私は、クラブやライブハウスやそれ以外でも音楽の流れている場所に行って音楽を聞いたり、話すか話さないかは別としてそこに知り合いがいたり、全然知らない人と話したりする日がなくなっても平気なのかもしれない。


音楽は立ち止まったりしながらでも続けられる。それが音楽の良いところだと思う。ただ、1人の時間が長いとそうそう続けられない。SNSでは繋がりの延命はできても代替はできない。そもそもSNS断ちしたくてTwitterは消したんだった。インスタグラムを消せないのは代替できなくても延命させたいと思っているからだ。


ここにきて、「音楽聞くのは自分にとっては不要不急じゃないっすから!」というマインドだけでは乗り切れなくなってきている。いつも感情は状況に遅れてやってくる。


大学生の頃、自分にターンテーブルやスピーカー、レコードを半永久的に貸してくれた先輩がいた。今もその機材は借りている。その人のDJはめちゃくちゃ上手くて、昔は曲も作っていたらしい。当時はなんでただの後輩にこんなええもんずっと貸してくれるんだろうと思っていた。


その先輩の気持ちが少しだけ分かるようになったかもしれない。