制作日誌4(セルフ楽曲解説編)

10/30 1st EP「The Music of Chance」をリリースします!

トラックリスト

1.Searching
2.Pinball
3.Almost Transparent Blue
4.The Box Man
5.Demolition

All songs prod by Jizo inc.

Mastering by KND

つきましては、制作日誌を書いております。

今回はセルフ楽曲解説です。

EPのタイトル含めて、すべて小説や映画から曲名を付けてるので、その辺の解説を。

 

【The Music of Chance】

今回は曲ができてから曲名やEPのタイトルを付けました。

EPタイトル「The Music of Chance」は「偶然の音楽」という小説からとってます。

www.shinchosha.co.jp

制作中に読んだ小説の中で一番印象に残っており、「偶然の音楽」っていう響きもまさに自分の制作に重なる部分があったので、これをEPのタイトルにしました。小説の空気感もどことなくこのEPと似たような雰囲気を感じたので。

自分が曲を作る時に、頭の中に最初からメロディや構成はあることはなく、いつも何かしら手を動かしながら偶然起こったことに引っ張られて曲を作っています。

サンプルを思いつきでリバースさせたり、33回転のレコードを45回転で再生させたり。

この「偶然」が私はとても好きです。そんな偶然が重なり、形になったのが「The Music of Chance」です。

 

【1.Searching】

この曲名は映画「サーチ」からとってます。

bd-dvd.sonypictures.jp

見せ方が面白い映画で見たことない人はぜひ。

タイトルに悩んでいた時、何となく水っぽい曲だよなーと思い、湖が出てくるこの映画を。

この曲がEPの曲では一番しっかり固まって、これができてから一気にイメージや雰囲気が立ち上がってきた感じです

 

【2.Pinball】

これは村上春樹の小説「1973年のピンボールからとっています。

bookclub.kodansha.co.jp

小説の楽しみ方も音楽と同じで何種類もあると思っていて。例えば、ストーリー全体を楽しんだり、ある登場人物に感情移入したり、伏線などの仕掛けに感心したり、たった一文だけが鮮明に記憶に残ったり。

村上春樹は何となくいけすかない感じがして読まず嫌いしてたんですが、家にいる時間が増えたので読んでみました。

読んでみてやっぱりいけすかないけど、とある一文があったので私にとってはとても印象深い作品になりました。

ひたすらにワンループな曲ですが、このワンフレーズを作ったこと、作ることができたことに意味があると思ってます。

 

【3.Almost Transparent Blue】

これは読んだまんま、村上龍の「限りなく透明に近いブルーからです。

bookclub.kodansha.co.jp

この小説の主人公はずっと俯瞰です。どんなに狂ったような状況でも、ずっとただ見ています。

見えるものをそのままただ見てしまうという行為は、とてもピュアで、自分を傷つけることにもなる行為です。

だから、年齢を重ねるにつれて、自分を守るためにも、ある光景を見なくても済むように目をつむったり、逸らしたりすることを覚えていきます。私自身そうしています。

ただ、たまに見えるものを純粋に見る、という行為は痛みを伴うけれども、見た人の中に忘れられない記憶や印象として残るのではないでしょうか。知らんけど。

全然曲解説になってないけど、こんなことをできた曲を聞きながら感じていました。

 

【4.The Box Man】

これはあれです。みんな大好き安部公房の「箱男」からです。

www.shinchosha.co.jp

これは唯一、数年前に読んだ本です。多分10代後半か、20才くらいの時。

この曲は一度ボツになりかけた曲だったんですが、自分の中で気に入っていたので、やっぱり入れることにした、という経緯があります。

この小説からタイトルを引っ張ってきたのは、男性の声が数小節の中にギュッと押し込められているように曲を聞いて感じたからです。

図らずも、主人公が「見る」タイプの作品が続きました。

 

【5.Demolition

最後の曲は、「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」という映画の原題から。

eiga.com

原題は解体という意味の単語なのですが、この方がこの映画のタイトルとして合ってるような気がします。

人は何度も間違うし、おかしなこともする。取り返しのつかないことだってある。

その度に、解体し、再構築して、それでなんとかやっていく。

僕がサンプリングという手法が好きな理由が、この映画を見てなんとなくわかったような気もしました。

晴れやかにも、暗くもならない、最後のこの曲には、この映画のタイトルがいいと思ってつけました。

 

ほとんど、曲の解説になってないかもですが、一旦これにて制作日誌は終了です。

今回出す曲が誰かにとって、印象的な作品の一つになってくれれば、これ以上ない幸せです。よろしくです。

Jizo inc.